素材開発インターン報告会を開催しました

 第一回素材開発インターン報告会~廃棄パンで紙を作る、名付けて「ペーぱん」~

 廃棄されたパンで紙を作るという世界で誰もまだ手をつけていないかもしれない実験を今回行ったのは、ロンドン大学から上回転研究所にインターンに来ている岡崎さん。

できあがった紙は見た目もパンらしさを残しながら驚くのはその匂い。小麦かバターか、とても甘くていい香りが残っていた。食パン、クロワッサン、サンドウィッチと元素材による違いも商品バリエーションに落とし込みつつ、たったの3週間(実質2週間)でどのように素材を作ってきたのか?

今回は廃棄パンから紙を作った報告イベントのレポートになります。

▼イベント概要
日にち:9月23日(金)
時間:20:00~22:00
場所:オンラインZOOM
参加人数:約16名、林業家、就労支援NPO法人代表、建築資材屋など

-タイムライン-
・イントロダクション
・ぺーぱん報告会
・素材デザイナー村上との対談
・参加者との交流

▼第2期上回転研究所 素材開発インターン生 岡崎早由里 Sayuri Okazaki

 

ロンドン大学ゴールドスミス校デザイン学部2年。グラフィックデザイナーとしてクライアントワークをしつつ、個人的にスペキュラティヴなデザインプロジェクトに従事。
ポートフォリオサイト: https://sayuriokazaki.myportfolio.com/work

 大学がコロナでロックダウンしている時に街でゴミ拾いをしながらゴミと人間の新しいコミュニケーションはなんなんだろうか?そんなことを模索しながら英語の詩で表現する作品などを作っていました。

▼テーマ:廃棄パン
メーカー余剰生産率0.4%
スーパー店頭廃棄率0.6%

他の納豆や牛乳より約3倍以上多いのが現状です。
そんな中、「私に何ができるか?」と考えた時に出てきたのが「パンを紙に変えて楽しむ」ということでした。

また、パンは海外だと文化の象徴(パンと人との新たな関係性)として使われていることもありますが、日本だと経済的なものとして使れる印象が強いです。包装に関しても環境に配慮するというより、いかに便利か?だけが追求されているように見えます。

そんな中で今回、廃棄されたパンを紙にするということで「新しい廃棄パンとのコミュニケーションの取り方」ができたらと考えました。

▼素材の特徴
・約80%廃棄パン残りは古紙などを使いほぼ100%廃棄物で制作可能
・誰でもどこでも簡単にできる工程(現在はパンから紙にするまで1.5日かかる)
・どんなパンでも紙にすることが可能
・パンの風合いや、香りが楽しめる紙

▼素材の種類

・ぺー食ぱん
 耳の茶色部分が意匠に反映されています。

・ぺークロワッぱん
 油分がたくさんあるのが特徴で、茶色の紙になります。

・ぺー惣菜ぱん(チョコレートメロンぺーぱん)
チョコレートの成分が出てるので黒い紙になります。

・ぺードウィッチぱん
 トマトの成分で全体が赤っぽくなります。

おまけ

・パンインク パンク
つけペンで使用可能なインクとなります。

▼制作の過程

・パンと紙を粉砕して水分で攪拌、紙漉きの技法でまとめました。
・最初はパンだけで紙をつくれないか?と思ったがそれは難しかったので、食物から取れる接着剤などでくっつけてみたりしたが、接着剤が強いとパリパリになってしまうという問題が出てきました。
・そこでパンを購入する時についてくる紙袋を混ぜ込んでみたら、紙袋からパルプを抽出してうまく形になりました。
・またその過程で出てくるパンの上積み液も油分があるので乳化することインクとして使えるようにした。こちらも全て食用のものを使用しています。

▼店舗へのヒアリング

・実際の店舗の方にヒアリングも行った結果、非常に興味を持っていただきました。あとは生産効率とクオリティさえ上がったら実用化は見えてくると思います。
・基本的には廃棄が出ないように努力しているので出た場合に紙にしてもありだがそれ以外の方法で活用していただけてもありがたい。まずは廃棄されるパンがあるという現状を知ってほしいです。
・また個人店と大手では課題の大きさが違うのでそこに目をつけても面白いかもしれないと思いました。

▼村上のインターン全体の感想
・実際、廃棄の選定から始まる中で最初は洗濯ででるゴミを使う話だったので、そのあとパンに代わっていったことを考えると、実質パンで紙を作る実験は2週間ほどの期間でした。
・2週間でどこまでできるかと考えていたが、本当にできたというのが驚きました。
・今後の改良が重要になってくるので製法や、使用率など実験を繰り返し形にしていく段階になると思うのでそこを一緒にやっていきたいと思います。

▼岡崎さんの感想統括
・素材開発は今後もライフワークとしてやっていきたいと思っています。
・キャリアとして消費されないデザインが作れるか?考えた時に今回の素材開発はとても参考になりました。
・村上くんとアイデアのブレストをする時に、機能ではなく、妄想的にアイデアを出していくのが発想法として勉強になりました。

▼パンから紙にすると決まった経緯
全て廃棄でできるといいよね。パンなら、廃棄される牛乳とか卵の殻とかとできるといいよねという話の中で、視覚的な視点から話が展開されていきました。そこで食パンがまるで障子のような見た目であることから、紙にできるんじゃないか?障子にお米ののりが使われているから、パンをつかったのりがあってもおもしろいんじゃないか?ということで発展していきました。

▼参加者の反応・質問
・パンの包装だけであれば強度はいらないから、その儚さが重要なんじゃないかと思っています。
・食べれますか?
▷古紙が入ってるのでそれを気にしない人なら食べれます。食べれる紙もあるので古紙をそれに変えたら可能です。

・立体的に、箱型に作ったりはできますか?
▷制作の難易度はあがるけど、できる可能性はある。紙作りの得意な会社と連携したい。

▼サステナブルの素材の強度について
 村上が作る素材は土に帰る前提で作っているから自然素材で作ることを大事にしている。その中で物の強度を上げるのではなく、自然に近いものに人の暮らしをフィットさせていくことが重要なんじゃないかと思っています。

とはいえ、企業は強度が求められたりもするのでそこは挑戦している状況です。

▼藤田の感想
今回の報告会は岡崎さんにとって「廃棄パンから紙が作れるか?」という挑戦であると同時に、僕たち上回転研究所にとっては「3週間で廃棄物から新素材が作れるのか?」という挑戦でもありました。

結果として、実質2週間でアップサイクル素人の岡崎さんが新素材のプロトタイプを作れたということは僕らにとって大きな意味があっただけではなく、廃棄物で何かしたいと思っている人たちの大きな希望になるんじゃないかと考えています。

この貴重な3週間をもとに僕たちが誰もが廃棄物でものを作れる環境を作っていきたいと思います。
定期的にカフェオレベースでものづくり体験ができるワークショップやオンラインイベントなども開催していきますのでもしよろしければ参加していただければと思います。

▼カフェオレベースワークショップ(名古屋市)
11/19 19:00~
https://peatix.com/event/3359953/

10/23 19:00~
https://peatix.com/event/3354909/


▼東京での展示会 9/27(土)~9/30(火)
株式会社船場(東京都港区)主催の新素材展示に、「カフェオレベース」と「resecco」を出展致します。
9/27~29は会場に村上がおります。
https://www.semba1008.co.jp/ja/release/news/event_ethicaldesignweek_2022.html